歯科医院での会話って、思った以上に「治療」そのものより大切な場面があります。
どんなに丁寧に処置をしても、患者さんが安心できていなければ、それは“信頼”にはつながりません。
今日は、歯科衛生士として14年間の中で感じた、信頼関係を築くための話し方のコツについて書いてみます。
「説明」より「共有」を意識する
患者さんに治療やケアの説明をするとき、どうしても「伝えなきゃ」という意識が強くなりがちです。
でも、そこで気をつけたいのが「説明」と「共有」は違うということです。
たとえば、「歯石を取りますね」と伝えるよりも、
「歯石がついているところを一緒に見てみましょう」と言うだけで、患者さんの表情は少し柔らかくなります。
“あなたの口の中のことを一緒に考えたい”というスタンスを出すことで、指導ではなく“共有”になります。
その一言の違いが、信頼の第一歩になるんです。
否定の言葉は「置き換える」
患者さんとの会話で避けたいのは、「ダメですよ」「ちゃんと磨いてくださいね」といった否定的なフレーズです。
指導的に聞こえてしまうと、どんなに優しく言っても“責められた”と感じる方もいます。
そんなときは、言葉を少し置き換えるだけで印象が変わります。
- 「ここが磨けていないですね」→「ここは少し磨きにくいですよね」
- 「毎日フロスを使ってくださいね」→「フロスを使うと、よりスッキリしますよ」
“できていない”ではなく、“こうするともっと良くなる”という方向に変えると、
患者さんのモチベーションも上がりやすいです。
「沈黙」も大事なコミュニケーション
説明の後、すぐに話し続けてしまう人も多いですが、あえて数秒、沈黙を作る方が良い場合もあります。
患者さんが考えているときに、焦って話を続けてしまうと、相手の思考を遮ってしまうことがあります。
たとえば、治療の説明の後に「どうですか?」と聞いたあと、
数秒の沈黙があったとしても、すぐに言葉を継がずに少し待ってみる。
その“間”の中で、患者さんが「実は気になることがあって…」と話し出すこともよくあります。
沈黙は「信頼してもらっている時間」でもあるんです。
「正論より、安心感」を優先する
歯科衛生士として働いていると、正しい知識を伝えたい気持ちが強くなります。
でも、患者さんが求めているのは“正しさ”よりも、“安心感”のことが多いです。
たとえば「歯ぎしりをやめてください」と言っても、実際に止められないのが現実です。
そんなときは、「歯ぎしりの力を分散できるようにマウスピースを使うのも一つの方法ですよ」と添えるだけで、
患者さんは“責められていない”と感じてくれます。
「守れない指導」より、「寄り添える提案」をすることが、結果的に継続的なケアにつながります。
患者さんの“背景”を想像する
一人ひとりの生活や性格は違います。
毎日忙しいママさんだったり、高齢の方だったり、仕事のストレスが強い人だったり。
「この人はなぜこのケアができなかったのか?」を考えると、自然と話し方も変わってきます。
たとえば、「夜遅くまでお仕事なんですね。歯磨きの時間がとりにくいですよね」と一言添えるだけで、
“理解してもらえている”という安心感を与えられます。
信頼は、理解されているという感覚から生まれるのです。
私が意識している3つの言葉選びのコツ
- 「〜してください」より「〜するといいですよ」
→ 命令ではなく提案に変わります。 - 「できていません」より「ここが少し難しいですね」
→ 相手を否定せず、一緒に課題を見つめる姿勢を。 - 「大丈夫ですよ」より「一緒に見ていきましょう」
→ 安心感と行動を同時に引き出す言葉です。
こうした言葉は、意識して使うようにすると自然と会話のトーンが柔らかくなります。
「伝える」より「つながる」コミュニケーションを
信頼関係を築くうえで大切なのは、
「正しく伝えること」よりも、「心を通わせること」だと思います。
会話の目的は“理解させる”ことではなく、“安心してもらう”こと。
その先に、自然と信頼が積み重なっていきます。
まとめ
歯科衛生士として働く中で実感しているのは、
技術よりも言葉の力が患者さんの心に残るということです。
- 「説明」ではなく「共有」する
- 否定ではなく提案に変える
- 沈黙もコミュニケーションの一部と考える
これらを意識するだけで、会話がぐっと柔らかくなり、信頼が育まれます。
患者さんが「この人になら任せたい」と思ってくれる瞬間こそ、
歯科衛生士としての一番のやりがいですよね。

