今日は「スケーリングって、実際どんなふうに進めるの?」という、歯科衛生士の仕事の中でもよく聞かれるテーマについて書きたいと思います。
患者さんから見えるのは、なんとなく “歯石を取っているだけ” のように見えやすいですが、
裏側ではたくさんの判断や工夫が動いています。
なので、それをあえて言語化してお伝えしていきますね。
「スケーリング=歯石取り」だけじゃない理由
スケーリングは歯石を落とすだけの作業と思われやすいです。
たしかに見た目はそうなのですが、実際にはもっと複雑です。
歯石を落とす前には、
・歯ぐきの状態
・プラークの付着具合
・食いしばりなどの癖
・知覚過敏の有無
など、いろんな情報を頭の中でさりげなく組み合わせています。
「ただ削るのではなく、“今その歯に必要な強さ・角度・順番は何か” を考える工程」
という感じです。
当たり前にやっていることほど、説明すると奥行きが出てきます。
よく言われる「効率重視」のスケーリング
その落とし穴
スケーリングの話題になると、
「効率的に、短時間で終わらせるのがプロ」
というフレーズを聞くことがあります。
気持ちはわかります。
予約時間は限られていますし、患者さんを待たせるのは避けたいので、スピードはもちろん大切です。
ただ、効率ばかりを優先すると、つい器具の角度が固定化されてしまったり、歯ぐきのコンディションの変化を見逃してしまうことがあります。
“早く終わったけど痛かった” という評価につながりやすいのも、このパターンです。
効率は大事。でも、効率だけでやると不思議と遠回りになる。
そんなバランスの難しさがあるんです。
痛みに敏感な患者さんとの「距離感」
スケーリングは、どうしても痛みや不快感を伴いやすい処置です。
特に、
・知覚過敏がある
・前に痛い思いをした
・歯ぐきが腫れている
という人は、器具が近づくだけで体がピクッとなります。
こちらとしては「丁寧にやりたい」気持ちが強くなるのですが、その丁寧さが“長さ”につながってしまうことがあります。
患者さん側の「もうちょっと早く終わってほしい」という気持ちと、
術者側の「でも、ちゃんと取り切りたい」という気持ち。
この“微妙な温度差”が、スケーリングの難しさをつくっている部分だと思います。
とはいえ、押さえるのは3つだけ
スケーリングを難しく考える必要はありません。
結局のところ、現場で大事にしているのは次の3つです。
1. 器具の角度よりも「当たり」を優先する
教科書では角度がとても大事と言われますが、現場では “どこに当たっているか” のほうがずっと重要です。
角度を気にしすぎると手が硬くなります。
当たりを意識すると、むしろ角度が自然に決まってきます。
2. 歯ぐきの反応を常に観察する
痛みを感じる患者さんは、必ずどこかで身体のサインが出ます。
・肩が上がる
・つま先に力が入る
・呼吸が速くなる
こうした小さな変化に気づけると、無理なアタックを防げます。
3. 「取り切る」のではなく「改善につなげる」
100%取り切ることをゴールにすると、深追いしすぎて痛みにつながります。
大切なのは、
「今日の処置でどれだけ改善できたか」
「次回につながる説明ができたか」
という柔らかい視点です。
スケーリングは一度で完結する処置ではありません。
生活とセットで考えたほうが、かえって成果が出やすいです。
私が意識している“やりすぎないスケーリング”
これは完全に個人的な考えなのですが、
私は「やりすぎないスケーリング」を心がけています。
強く取りに行けば、取れる歯石はあります。
でも、そのぶん痛みや嫌悪感につながりやすいんです。
一度痛い経験をすると、次のメンテナンスに来るハードルが上がります。
そうなると、結果的に歯石が増えて余計に時間がかかります。
だから私は、
“来院しやすい状態を育てること”
をスケーリングの一部だと思っています。
これをものすごくざっくり言うと、
「取り切るより、また来やすい空気をつくるほうが大事」
という感覚です。
まとめ
スケーリングは「歯石を取る作業」のように見えますが、実際はもっと繊細で、もっと生活に近い処置です。
・効率だけを求めない
・痛みのサインを見逃さない
・改善につながるラインを探す
これだけでも、患者さんの安心度は大きく変わります。
うまくやろうと頑張りすぎると、かえって固くなります。
手の動きも、コミュニケーションも。
だからこそ、
“ほどほどに丁寧で、ほどほどに柔らかいスケーリング”
を目指すくらいが、ちょうどいいのかもしれません。
また現場の経験で気づいたことがあれば、ゆるっと書いていきますね。

